深水千世
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蝉の喝采 最終回 / 深水千世
甲斐先生と会うのは、いつも金曜日の夜七時だ。時計の針はもうすぐ七時になる。きっと、彼から連絡がくるのはもうす…
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蝉の喝采 第六回 / 深水千世
拓也はすぐにアパートまで迎えに来てくれた。 「梢、どうした?」 驚き、心配している拓也の前で私は子どものよ…
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蝉の喝采 第五回 / 深水千世
それから三日後のことだ。 「水川さん、まだ残ってるの?」 上司が帰り支度をしながら、声をかけてきた。 「す…
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蝉の喝采 第四回 / 深水千世
五月最初の酒はウイスキーのシングルモルトと決まり、肴は鶏肉のハーブソテー、ムール貝のトマト煮込み、オ…
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蝉の喝采 第三回 / 深水千世
週が明けると、土曜日になんの酒を持参しようか考えてばかりだった。とりあえずビールから始めようとはあらかじめ話…
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蝉の喝采 第二回 / 深水千世
拓也の料理教室がオープンしたのはそれから一か月後の春先だった。 土曜日の午前十時が彼と会う約束の時…
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蝉の喝采 第一回 / 深水千世
弓道場は貸し切り状態だった。しんと静まり返ったなか、的を見つめ、ゆっくりと打ち起こす。矢を水平に保つ…
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『ベトナムで会いたいね』 / 深水千世
彼の名前を久しぶりに見つけたのは、たまりにたまったメールを整理しているときだった。 懐かしさのあまり、…
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迷えるメダカ 最終回 /深水千世
そしてとうとう、ネコさんと会えなくなって二ヶ月がたった。 放課後、いつものように図書館のベンチに腰を下ろす…
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迷えるメダカ 第五回 /深水千世
少しはましなパンが焼けてきた頃、珍しく朝食をともにした父親は怪訝そうな顔つきで言った。 「最近、米を炊かない…
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